スクラム(scrum)
軽度の反則や競技の中断があった後に
ボール獲得のための争奪でプレーを再開すること
各チーム8人ずつで行われる(計16人)
8人の選手は3列の隊列を組み、相手と組み合い、
ボールが2チームの間の隙間に投入され、
ボールのポゼッションが争われる
補足
どちらのチームも、フッカーが、
足でボールを後ろに掻きこむことでボールを奪い合う
ボールを投げ入れる側のチームが有利ではあるが、
相手を後ろに押していくことで、
投げ入れない側のチームもボールを得ることができる
スクラムが組める区域を「スクラムゾーン」という
スクラムゾーン
スクラムゾーンの外で反則が行われた場合は、
スクラムゾーン内の最も反則位置に近い位置
などにおいてスクラムが行われる
スクラムが行われるケース
スクラムが行われるのは、主に以下などの場合
• モールやラックなどの密集状態からボールが出ない場合
• 重度な反則の際にスクラムを選択
軽度な反則
• ノックオン(ボールを前に落とす)
• スローフォワード(ボールを前に投げる)
• やむなくオフサイドとなってしまった場合
など
レフェリー
反則があった際に笛を吹いて試合を止め、
スクラムで再開させる
ボールの投入
反則をしていないチーム
密集からボールが出ない場合
•「モール」状態からボールが出ない場合
•「ラック」状態からボールが出ない場合
レフェリー
ボールが出てこない(アンプレアブル)と
判断した場合に笛を吹いて試合を止め、
スクラムで再開させる
ボールの投入
【ラックの場合】
最後に前進したチーム
(どちらも前進していない場合は攻撃側チーム)
【モールの場合】
モール開始時にボールを保持していなかったチーム
(判断不可の場合、停止前に前進していたチーム)
(どちらも前進していない場合は攻撃側チーム)
重度な反則
重い反則の場合に、
スクラムを再開方法として選択した場合
重度な反則の場合、以下から選択
• ペナルティーキック(直接ゴールを狙う)
• マイボールスクラム
• その場で軽くキックしてリスタート
• タッチキックからのマイボールラインアウト
(タッチキック=タッチに直接蹴り出すキック)
その他
• 防御側が自陣インゴールに持ち込みボールデッド
(ボール投入:攻撃側チーム)
• 正しくないキックオフで、スクラムを再開方法に選択
(ボール投入:ボールを蹴らなった側のチーム)
• ボール又はボールキャリアーがレフリーに触れ、
どちらかのチームが利益を得た
(ボール投入:ボールを最後にプレーしたチーム)
• 負傷による競技の停止
(ボール投入:ボールを最後に保持していたチーム)
• ラインアウトにおける正しくない投入
(ボール投入:反則をしていないチーム)
など
スクラムの組み方
スクラムは1チーム8人が参加し、
3列になって、腕を組み合って作られる
それぞれのチームの最前線が、互いにバインドする
基本的にフォワードの選手「1番~8番」で組むが、
絶対にフォワードでないといけないということはない
(バックスの選手が入っても反則にはならない)
各列の名称、人員
【2列目】セカンドロー:2人
【3列目】サードロー、バックロー:3人
20世紀末頃以降では「3列目のフランカー:2人」が
それぞれ2列目のロックの外側に位置し、
「ナンバー8:1人」のみ最後方に位置する形が主流
(3ー4ー1システムと呼ばれる形)
ただし、スクラムの分類の仕方は
上記の1列目~3列目の分類のまま変わっていない
フロントロー(1列目・3人)
直接、相手フォワードと組み合う最前線で、
「プロップ:2人」とそれを間でつなぐ「フッカー:1人」
の計3人で構成される
「フッカー (HO)」と「左右のプロップ (PR)」
(左プロップ[1] 、フッカー[2] 、右プロップ[3] )
スクラムは何人で組んでもよいが、
フロントローが3人というのは、ルール上決められている
セカンドロー(2列目・2人)
フロントローをすぐ後ろでサポートする「ロック:2人」
(スクラムをロックするため「ロック」)
「左右のロック(LO)」
(左ロック[4]、右ロック[5] )
2人の「セカンドロー」は互いにバインドし、
それぞれがプロップとフッカーの間に頭を入れる
サードロー、バックロー(3列目・3人)
最後列からスクラムを押す3人で、
「フランカー:2人」と「ナンバーエイト:1人」で構成
「ナンバー・エイト (NO8)」と「左右のフランカー (FL)」
(左フランカー[6]、NO8 [8] 、右フランカー[7] )
現代主流のスクラムでは、フランカーは、
ロックの隣・プロップの後ろにバインドし、
NO8は2人のロックの間に頭を入れてバインドする
スクラムの進め方
スクラムを作るために両チーム(8人の集団)は、
互いの腕の長さの範囲内に接近する
以下レフリーの合図で進められる
②『バインド』…1番、3番が相手の肩~腰を掴む
③『セット』 …コールがかかると同時に組み合う
この状態でボール投入(押し合いスタート)
⑤『後方にフック』…足でボールを後方へコントロール
⑥『ボール拾い上げ』…拾い上げた時点からインプレー
レフリーの合図
①クラウチ(crouch)
レフェリーが「クラウチ」とコールすると、
向かい合ったフロントローは身をかがめる
(両チーム、しゃがんだ体勢になる)
②バインド(bind)
レフェリーが「バインド」とコールすると、
両チームの左右プロップ同士がつかみ合って繋がる
基本的には、1番は左手を相手の脇の下から交差、
3番は右手を相手の上から交差するようにして、
相手プロップの脇の下や背中の部分をつかむ
2019年より、フロントローは「セット」のコール前に
頭を相手選手の首や肩に触れてはいけないと規定された
(これまでは、触れた状態から組み合っていた)
③セット
最後にレフェリーが「セット」とコールすると、
フロントロー同士が組み合い、スクラムを形成
双方のフロントローは、
ぶつからないように頭を交互に入れ込み、
衝突しながらしっかり組み合う
ボール投入~インプレー
④ボール投入
マイボール側のスクラムハーフが、
両チームのフロントローの間のトンネルにボール投入
(ボールは真っすぐに転がして投入する)
ボールが投入されるとスクラム開始、
両チーム、この時点から押してよい
相手を後方に押しやることでボール確保を狙う
⑤足でボールを後方へコントロール
ボールが投入されると、
それぞれのチームのフッカー(時にはプロップ)は、
ボールを足で掻きこんでボール確保を目指す
そして、ボールをロックやナンバー8の下へと送り、
ボールをスクラム後方へと移動させる
ボールを投入したチームのフッカーは、
必ずボールに足を当てなくてはいけない
⑥ボールを拾い上げる
ボールがスクラム後方へ移動すると、
「ナンバー8」又は「スクラムハーフ」が拾い上げる
ここから、ボールはインプレーとなり、
ボール保持者はラン、パス、キックなどを行う
スクラムはマイボール側が有利
スクラムは、投入したボールを取り合う行為だが、
以下の理由より、マイボール側のチームが有利となる
②. スクラムの性質上、マイボール側が先に触れやすい
ただし、スクラムで押されるほど、
投入したボールが相手側にいってしまい、
ボールを奪われることもある
①. 自陣寄りにボールを投入
ボールは真っ直ぐに投入するルールがあるが、
投入の際、肩幅分だけ自陣側に立つことができるので、
自陣寄りにボールを投入することが可能
②. マイボール側が先に触れやすい
スクラムを組む際、相手選手の頭の左側に、
自分の頭を入れることが義務付けられている
ボールはスクラムハーフが
どちら側から投入するか選択できる
そこで、左側から投入することで、
先にボールに触れやすいようになっている
スクラムでの主な反則
アーリーエンゲージ
レフリーのコールに合わせてスクラムを組まなかった、
または、組めなかった場合
➝相手ボールの「フリーキック」となる
オーバータイム
スクラムが条件を満たしていればスクラムハーフは
直ちにボールを投入しなければならないが、
タイミングがあったにも関わらず、投入しなかった
➝相手ボールの「フリーキック」となる
コラプシング
故意にスクラムを崩した
➝相手ボールの「ペナルティ」となる
スクラムホイール
スクラムが押し合っている状態から
90度回ってしまった
➝相手ボールの「ペナルティ」となる
ニーリング
故意に膝をついた
➝相手ボールの「ペナルティ」となる
ノーバインド
スクラムが開始してから終了するまで、
継続して、バインドしていなければならないが、
ボールが出る前にバインドを外してしまった
➝相手ボールの「ペナルティ」となる
ノットストレート
スクラムへボールを投入する際、
真っすぐに入れることができなかった
➝相手ボールの「フリーキック」となる
フットアップ
スクラムへボールが投入される前に、
フッキングの動作をする
➝相手ボールの「フリーキック」となる
ピックアップ
スクラムの中にあるボールを手で拾い上げる
➝相手ボールの「ペナルティ」となる
安全性
スクラムの崩壊あるいは不適切なエンゲージは、
選手の怪我の恐れ(首の骨が折れる危険もある)のため、
ラグビーにおいても特に危険とされる局面
このような理由から、
フロントローとして確かな知識を持ち、
鍛えられた選手のみがフロントローでプレーできる
怪我や一時退場などにより、
フロントローのスペシャリストが不在の場合、
「アンコンテステッド・スクラム」が行われる
アンコンテステッド・スクラム
「争われないスクラム」を意味する
エンゲージするが互いに押すことはせず、
ボールを入れた側がボールを得る、というスクラム
プッシュオーバートライ
スクラムのままゴールラインを超えて、
トライを決める方法
詳細
スクラムの中にあるボールがゴールライン上に乗った、
または、ゴールラインを越えた場合、
その瞬間、スクラムは終了となる
その瞬間からどの選手でも
ボールをグラウンディングすることができ、
グラウンディングすることにより、トライが成立
補足
スクラムはゴールラインとタッチラインから
最低5メートル離れて開始される
(スクラムゾーン内)
プッシュオーバートライをするためには、
スクラムが崩壊することなく、
一方向に少なくとも5m以上進まなければならない
スクラムの語源
スクラム(英:scrum)は、
スクラメージ(英:scrummage)の短縮
スクラメージ(scrummage)
「スクリメージ(scrimmage)」が変化したもので、
「scrimmage」は、「skirmish(小競り合い)」に由来
あるいは音変化したものとされる
「スクラメージ」は「スクラム」に短縮されるまで
ラグビーのルールで使用されていた
現在でも、アメリカンフットボールや
カナディアンフットボールなどで使用されている
近年の主なスクラムルール変更
1960年代
・オフサイドラインがスクラムの最後部の足となった
(以前はスクラム中でもボールの位置によって決定)
・ナンバーエイトもボールをスクラムから
引き離すことができるようになった
(以前はスクラムハーフのみ)
2007年
スクラムのエンゲージを制御する試みとして、
スクラムの組み方が「4段階」へと規則が改正された
(①クラウチ➝②タッチ➝③ポーズ➝④エンゲージ)
【ルール変更の理由】
フロントロー間の距離を修正し、
エンゲージからの衝撃の力を弱めることで、
選手の首の怪我を低減させること
2013年
スクラムの際のコールが変更
(①クラウチ➝②バインド➝③セット)
•「タッチ」➝「バインド」に変更
•「エンゲージ」➝「セット」に変更
•「ポーズ」➝廃止
【ルール変更の狙い】
この変更により、押すのを許可される前に
プロップはバインドしなければならず、
エンゲージの際の衝撃が弱くなる
2019年
フロントローは「セット」のコール前に
頭を相手選手の首や肩に触れてはいけないと規定された
(それまでは、触れた状態から組み合っていた)