魚醤(ぎょしょう)
魚介類を発酵・熟成させたもの
主には、
その上澄み液を濾(こ)した液体のことをいう
(「魚醤油(うおしょうゆ)」ともいう)
濾す前の固形物を含めていう場合もあり、
ペースト状や塩辛などのことを言ったりもする
特徴
旨味も風味も濃厚
旨味
魚肉のタンパク質などの成分が
魚の内臓にある酵素で分解されてできるため、
アミノ酸などの旨味成分が凝縮される
風味
動物性タンパク質などが分解された独特の風味をもつ
海外の魚醤
魚醤はアジアの各地域でもつくられており、
なかでも有名なものは、
• タイの「ナンプラー」
• ベトナムの「ニョクマム」
製法
大量の塩と共に漬け込むことで、
内臓に含まれる酵素で自然発酵させるものが一般的
(塩漬けにして重石をのせる)
麹を加えたり、酵素剤を投入することで、
発酵を助長するものもある
数か月以上発酵させ、熟成が進むと、
魚の形が崩れ、全体が液化してくる
(製造には一般に1年以上かかる)
魚醤のしくみ
生物の内臓には、酵素や微生物が存在し、
その働きによって食べたものを分解している
生きている間はこれらの活動は制御しており、
自分自身を分解することはないが、
死ぬと制御できなくなり、内側から分解されるようになる
魚醤は、この作用を利用したもの
(分解されて身が崩れ、旨味成分が抽出される)
塩漬け
塩漬けにしているのには、
腐敗を防いだり、体内から水分を脱水させる効果がある
用例
• 料理の隠し味として使用
(炒め物、焼き物、煮物など)
• 一般的な醤油に混ぜて使用
(醤油に魚醤の旨味が加わり、深い味わいになる)
• 塩の代わりとして調理に使用
• 鍋物など、だし汁の原料として使用
• ドレッシングの原料として使用
魚醤の種類
日本の魚醤
日本の魚醤として有名なものは以下など
• 石川県の「いしる」
• 香川県の「いかなご醤油」
(これらは日本の三大魚醤とも言われる)
しょっつる(塩魚汁)
秋田名物で、
伝統的には「ハタハタ」でつくる魚醤
現在作られている「しょっつる」は、
アジやイワシなど様々な魚でつくられる
いしる(いしり、よしる、よしり)
能登半島で古くからつくられている
イワシやイカを原料とした魚醤
いかなご醤油
香川県の特産品
イカナゴ(スズキ科の小魚)を原料とした魚醤
そのほか全国の様々な魚醤
• 北海道の「鮭魚醤」
• 青森県の「ほたて魚醤」
• 新潟県の「しょっからいわし」
• 神奈川県の「鵠沼(くげぬま)魚醤」
• 大分県の「鮎魚醤」
など
海外の魚醤
アジアを中心に各国様々な魚醤があるが、
なかでも日本で有名なものは、
• ベトナムの「ニョクマム」
ナンプラー(タイ産)
タイでは欠かせない調味料
主にカタクチイワシ類からつくられる魚醤
(アジ、イワシ、サバなど他の魚種も混合して用いる)
「ナン=水、プラ=魚」を意味する
ニョクマム、ヌクマム(ベトナム産)
原料や製法はナンプラーと同様だが、
ナンプラーより発酵が浅く、香りが強く感じられる
「ヌク=水、マム=魚介発酵食品」を意味する
歴史
魚醤は紀元前からつくられていたとされる
古代ローマ時代、ヨーロッパでは
アンチョビの内臓を原料とする「ガルム」という魚醤が
日常的に使われていたとされる
「ウスターソース」や「ケチャップ」なども
もとは魚醤が起源であると言われる