「十分」と「充分」の違い
辞書ではどちらも同じ意味で、
本来は両者に区別はない
ただし、特に使い分ける場合は、
以下のように区別されて用いられることが多い
【十分】
数値的・物理的に満たされていること
【充分】
量的なものではなく、感覚的に満たされていること
補足
どちらを使用するか迷った場合には、
「十分」を使用することが推奨される
元々使われていたのは「十分」とされ、
後に、充実、充足など「十分」と似た意味も持つ
「充」をあてた「充分」が使われるようになったとされる
「十分、充分」の意味
• 満ち足りて不足のないさま、充実して完全であるさま
• 思い残すところのないさま
• 必要なだけ、またはそれ以上あるさま
十分
主に数量的に満たされた状態に用いられる
また、客観的にも不足がなく、満たされている状態
(特に、十分と充分をわけて考えた場合)
「十分」の用例
• 十分な人数が集まった
• 十分な売り上げがある
• 十分な席がある
など
時間の「10分」との混同
使用する場面や使い方によっては、
満たされている意味での「十分」なのか、
時間の「10分」なのか伝わりにくいこともある
• 十分に人が集まった
• 十分煮る
• 残り時間は十分ある
など
「十」のもつ意味合い
• 数の名称(10番目)
• 「多く、全部」などを例える言葉にも使われる
例)
【十徳ナイフ】
必ずしも10個のツールが付いているわけではなく、
「たくさん」の便利ツールが付いたナイフ
【十割】
一から十まであるうちの「十」
(全てを意味する)
「十分」における「分」
「十分」における「分」は、
主に、「分割」や「部分」の意味をもつ
(特に、十分と充分を分けて考えた場合)
この場合における「十分」は、
「10分割したものが、10あること(全部)」
「十分」の関連語
• 一分(いちぶ)、二分(にぶ)
• 腹八分目
• 十二分
など
充分
量的ではなく、感覚的に満たされていることを表す
また、実際の量は足りていなくても満足のいく場合など
(特に、十分と充分をわけて考えた場合)
感謝の気持ちなどを表したいときには、
「充分」を使った方がより伝わりやすい
「充分」の用例
• 気持ちだけで充分
• 充分楽しめた
• 充分の出来栄え
など
「充」のもつ意味合い
• 満ちる(充ちる)、満たす(充たす)
• 足りないところに詰め込む
• 担当する、埋める
など
「充分」における「分」
「充分」における「分」は、
主に、「成分」「本分」「職責」などの意味をもつ
(特に、十分と充分を分けて考えた場合)
この場合における「充分」は、
「すべきこと(分)をしっかりと満たす(充たす)こと」
「充分」の関連語
• 充実
• 充足
• 充填
など
公的な使い分け
公文書、義務教育、新聞社などでは
「十分」もしくは「じゅうぶん」が用いられている
憲法では「充分」が用いられている
(日本国憲法第37条など)
文化庁による見解
文化庁における『語形の「ゆれ」の問題』の報告の、
「十分と充分」に関する内容を抜粋したものは以下の通り
「十分」と「充分」いずれも普通に行なわれている
憲法では「充分」を使っている
本来は「十分」であって「充分」はあて字であり、
「十」の方が字画も少なく教育漢字でもあるので、
漢字を使うとしたら「十分」を採るべきであろうしかしながら、
最近では、この語はかな書きにする傾向がある公用文などには、
かな書きの「じゅうぶん」を採リ、
「十分」と書くことを許容している
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