「サルモネラ菌」は、食中毒の原因ともなる細菌

サルモネラ菌(Salmonella)

サルモネラ属菌は、
鶏、豚、牛などの動物の腸管や
河川など自然界に広く分布して生息する細菌

一部のサルモネラ菌はヒトに対する病原性を示し、
その感染した食物を口にすることなどにより、
胃腸炎などの症状を引き起こす

サルモネラ属菌は自然界において、
様々な動物の消化管内に常在菌として存在するが、
健康なヒトの消化管における菌数は極めて少ない

 

 

特性

サルモネラ属菌は、熱や酸には弱いが、
乾燥や低温には強く、生存力の強い細菌

乾燥に強く、乾燥した環境でも数週間生存可能
(ただし、乾燥状態では増殖はしない)

凍結しても不活化しない
(冷凍食品からもサルモネラ食中毒が発生する)

 

熱への特性

• 5℃以下及び50℃以上では「増殖」しない

• 75℃以上1分間の加熱でほとんど死滅する

 

 

特徴

サルモネラ属菌は、腸内細菌科に属する細菌

一般的なものでは、大きさ「2~5µm」程度

細胞内寄生性細菌の一種であり、
感染先の細胞内・細胞外の両方で増殖が可能

 

増殖の特徴

細胞内寄生菌の多く

生体内で異物の排除を行うマクロファージに
貪食されることで細胞内に取り込まれ、
その殺菌機構を逃れてマクロファージ内で増殖する

サルモネラ属菌

マクロファージ以外の、
通常ならば貪食活性を持たない腸管上皮細胞
などにも侵入し、増殖できる性質を持つ

 

 

 

サルモネラ感染症

サルモネラ感染症は、
サルモネラ属菌によって引き起こされる感染症で、
チフス性疾患と非チフス性疾患に大きく分けられる

 

チフス性疾患

ヒトに対して強い病原性を示し、
消化器症状は目立たないが、高熱が出るのが特徴
原因菌:チフス菌、パラチフス菌など

チフス菌やパラチフス菌は、
主にマクロファージに感染して菌血症を起こす

チフス性サルモネラは、
感染者の糞便から別のヒトに感染するほか、
糞便によって汚染された土壌や水が感染源になる

 

非チフス性疾患

消化器症状(胃腸炎など)が主症状で、
日本におけるサルモネラ感染症は、ほぼ非チフス性
原因菌:ネズミチフス菌、腸炎菌など

これらのサルモネラ属菌は「食中毒性サルモネラ」
とも言われ、腸管上皮細胞に感染して胃腸炎を起こす

食中毒性サルモネラは、人獣共通の感染菌で、
ペットや家畜の腸管に常在菌としても存在し、
そこから汚染された食品などが食中毒の原因となる

 

 

潜伏場所・感染経路

潜伏場所

家畜(牛、豚、鶏)の腸管内では、
常在菌として保菌していたりする

また、河川など自然界や下水などにも
広く生息している

 

感染経路

食品

汚染された食品の生食、
あるいは不十分な加熱により食べた場合

食肉、特に鶏肉と卵を汚染することが多く、
原因食品として「鶏卵」がよく知られる

二次感染

感染した物に接触した手指や調理器具により、
調理や食事をすることなどによる二次感染

ペット

サルモネラ菌は、犬・猫・鳥などのペットも
保菌していたりするので、
ペットを介した感染にも注意が必要

 

原因となりやすい食品

• 鶏卵
• 食肉調理品(牛、豚、鶏などの生肉、内蔵)
• うなぎ
• スッポン

など

 

鶏卵のサルモネラ汚染

鶏の消化管内に寄生したサルモネラ菌が
卵殻の外側を汚染するため、
汚染防止には鶏卵の洗浄が有効

また、卵殻の外側からの汚染のみではなく、
卵巣や卵管に寄生し、卵黄や卵白の部分に保菌し、
鶏卵を汚染しているということもある

ただし、
卵殻内が汚染された鶏卵は数千個に1つとされ、
保存状態が良く、菌が増えなかった場合は、
この1つだけでは食中毒を起こすほどの菌量はない
(小児や高齢者、体力低下の際などは注意が必要)

 

 

発症

潜伏期間は、5~72時間などとされ、
半日~2日程度で発症することが多い

症状は2~7日程度続く
(1週間以上に及ぶこともある)

例年7~9月の夏季が発症のピーク期間

 

 

症状

胃腸炎の症状を起こし、時には脱水症状を伴う
(腹痛、下痢、発熱、おう吐が主症状)

まれに、症状がなくなっても体内に長期間、
サルモネラ菌を保菌することもある

健康な成人では症状が胃腸炎にとどまるが、
小児や高齢者では重症となることがある

 

 

感染対策

• 手指の洗浄消毒の徹底
(料理前、排便後、ペットに触れた後など)

• 調理の際は中心部まで火が通るように十分に加熱
(中心部75℃以上で1分以上など)

• トイレ内は、こまめに消毒
(レバー、便座、ドアノブなど)

• ネズミなどの駆除

など

 

鶏卵

• 購入後は冷蔵保管
(殻にヒビがあるものには注意)

• 生食は新鮮なものを摂取する
(期限表示内に消費)

• 割卵後は直ちに調理して早めに食べる
(卵の割り置きはしない)

 

 

治療

治療の原則は、まず脱水の予防と治療

細菌性胃腸炎が疑わしければ抗菌薬を投与
(止痢薬、鎮痛薬は使用しない)

 

 

 

サルモネラ菌の分類

サルモネラ菌は、腸内細菌科に属する細菌で、
その一部はヒトや動物に感染して病原性を示す

サルモネラ属菌は、菌体表面を構成する抗体の
組み合わせによって2500以上の種類があり、
年々新しい型が発見されている

大きく分類すると以下の2種など
• サルモネラ・ボンゴリ(Salmonella bongori)
• サルモネラ・エンテリカ(Samonella enterica)

 

サルモネラ・エンテリカの分類

Samonella enterica(S. enterica)は、
以下の6亜種に分類される

• S. enterica subsp. enterica
• S. enterica subsp. salamae
• S. enterica subsp. arizonae
• S. enterica subsp. diarizonae
• S. enterica subsp. houtenae
• S. enterica subsp. indica

ヒトや動物に病原性のあるサルモネラは、
S. enterica subsp. enterica」のみで、
その他の亜種は原則的には非病原性である

 

サルモネラ感染症の原因菌

サルモネラ感染症の原因菌となるのは、
サルモネラ・エンテリカ
S. enterica subsp. enterica )

これを細分化すると、以下などがある

• チフス菌:S. Typhi
S. enterica subsp. enterica serovar Typhi )

• パラチフス菌:S. Paratyphi A
S. enterica subsp. enterica serovar Paratyphi A)

• ネズミチフス菌:S. Typhimurium
S. enterica subsp. enterica serovar Typhimurium)

• 腸炎菌:S. Enteritidis
S. enterica subsp. enterica serovar Enteritidis)

 

補足

従前のサルモネラ属菌による食中毒は、
ネズミによる媒介で知られる「S. Typhimurium」
などによるものが多かった

衛生状態の向上により過去のものと思われがちだが、
最近は感染力が強い「S. Enteritidis」の
鶏肉や鶏卵を介した食中毒が増加している

 

 

 

名称の由来

サルモネラ(Salmonella)は、1885年アメリカで、
サルモネラ属の基準株であるブタコレラ菌を発見した
細菌学者「サルモン (Salmon)」に由来

 

 

 

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