「海水魚」と「淡水魚」の違い
魚類は、大きく分けると、
• 川、湖、沼、池など(淡水)に住む「淡水魚」
• 海水と淡水の両方で生息する魚もいる
「海水魚・淡水魚」と浸透圧
魚の体液には、
人間と同じく「約0.9%」の濃度の塩分が含まれている
(海水魚も淡水魚も同様)
この体液濃度と、
「海水・淡水」それぞれの塩分濃度の関係により、
それぞれ異なる浸透圧の影響が生じ、
「海水魚」と「淡水魚」の違いが生じる
そして、
この浸透圧によるそれぞれの影響を解消すべく、
それぞれの浸透圧や塩分の調節機能がある
浸透圧
濃さの異なる液体が、
半透膜という薄い細胞膜で仕切られているとき、
同じ濃さになろうと半透膜を通って移動する現象
薄い方から濃い方へ移動する作用
海水魚の場合
• 海水の塩分濃度は、「約3.5%前後」など
(体液より海水の方が濃い)
• 浸透圧の関係性では、魚から海水へ水が移動する
(海水をそのまま取り込むと体内の水分が奪われる)
このため、海水魚は、
「海水中の余分な塩分だけ排出しながら水分を補給する」
といった性質、機能を持つ
淡水魚の場合
• 淡水の塩分濃度は、「0.05%未満」など
(体液より淡水の方が薄い)
• 浸透圧の関係性では、淡水から魚へ水が移動する
(淡水をそのまま取り込むと体内に水分が入り過ぎる)
このため、淡水魚は、
「水分はなるべく取り込まずに、塩分を取り込む」
といった性質、機能を持つ
海水魚
海水に生息する魚の場合、
体液の濃度より海水の濃度が高い
何もせず海水を取り込めば、浸透圧の影響により、
細胞膜の薄い部分などから体内の水が出ていく
(脱水状態に陥って死に至る危険がある)
そこで、海水から水分を取り入れる際には、
エラで塩分を排出して塩分が薄まった水を補給し、
体内の塩分濃度を調整している
(塩分を排出し、濃度を調整)
補足
海水魚は、
体液と同じくらいの濃度の尿を排出するとされる
(水分補給後の体内における塩分濃度調整)
ただし、
尿は少量であるため、エラからの排出が重要
淡水魚
淡水に生息する魚の場合、
体液の濃度より淡水の濃度が低い
何もせず淡水を取り込めば、浸透圧の影響によって、
細胞膜から体内にどんどん水が入っていく
(膨張したりなど、死に至る危険がある)
そこで、水分を取り入れるのは少量にし、
食べ物から塩分を補給、もしくはエラによって
周囲の水の中の塩分を取り込み、体内の濃度を保つ
(塩分を取り込み、濃度を調整)
補足
淡水魚は、
濃度の薄い尿を大量に排出するとされる
(水分補給後の体内における塩分濃度調整)
体内の濃度を維持し、余分な水を排出する
海水と淡水を行き来する魚
「サケ、鮎、ウナギ」などは海水と淡水を行き来する
(海でも川でも生息する)
これらの魚は、浸透圧調節機能を
環境に応じて切り替えているとされる
行き来の際には環境をいきなり変えるのではなく、
海水と淡水が混ざった場所(河口付近:汽水域)で
生活して体を慣らし、機能を変化させているとされる
「海水魚」と「淡水魚」の共存
海水魚と淡水魚は生息地の水の塩分濃度は異なるが、
どちらも体液の塩分濃度は同じ
そして、必ずしも
「海水魚は海水」「淡水魚は淡水」にしか住めない
ということではなく、体内の塩分濃度の調節機構で
補える範囲であれば生息可能
また、
海水魚と淡水魚が生存可能な塩分濃度には、
それぞれ幅があり、その幅には重なる部分があるので、
その範囲内であれば、両者は共存可能
補足
単純に考えると、
• 海水魚にとっては体液よりも薄い水は致命的
• 淡水魚にとっては体液よりも濃い水は致命的
• 体液と同様の塩分濃度の水ならどちらも生息可能
(体液と同様の塩分濃度➝「約0.9%」)
好適環境水
海水魚と淡水魚の共存を可能にする水として、
研究が進められており、実際に水族館でも使用され、
同じ水槽で海水魚と淡水魚が飼育されていたりする
この好適環境水は、海水に含まれる元素の中から
魚の浸透圧調節に関係している成分を特定し、
その最小限必要な成分を淡水に加えるといったもの
浸透圧は成長の妨げにもなると考えられており、
好適環境水を用いると、その影響を受けないので
海水魚も淡水魚も成長が早いとされる