海水では水分補給できない
人間の体内は「約0.9%」の塩分を含んでいるが、
この塩分濃度が高過ぎても低すぎても、
体が正常に機能できなくなる
海水の塩分濃度は「約3.5%前後」であり、
飲むと、体内の塩分濃度が上がってしまうため、
体は塩分濃度を下げるためにさらに水を必要とする
つまり、
海水を飲むと、逆に脱水症状を起こしたりなど、
体が正常に機能しなくなり、命の危険が生じる
(海水を飲むほど喉が渇き、悪循環に陥る)
体内の塩分濃度と浸透圧
人体の約60~70%は水分
このうちの、
「約3分の2」…細胞内にある「細胞内液」
「約3分の1」…血液や細胞間の体液である「細胞外液」
細胞内液と細胞外液の間には「細胞膜(半透膜)」がある
このように
濃度の異なる2つの液体が半透膜を隔てて存在するとき、
同じ濃度になろうと薄い方から濃い方へ移動する力が働く
(これを「浸透圧」という)
補足
通常は、細胞内液と細胞外液の水分は、
腎臓の働きによって、濃度が維持され、
それによって浸透圧も一定に維持されている
体内濃度と海水濃度
・人間の体液の塩分濃度➝「約0.9%」
・海水の塩分濃度➝「約3.5%前後」
(普段口にする水の塩分濃度は0.02%以下など)
このように、体内より海水の方が塩分濃度が高いため、
海水を飲むと体内の塩分濃度が高くなってしまうが、
腎臓などの働きにより塩分濃度は調整される
調整が間に合わないと危険状態に陥る
調整が間に合わないほど塩分濃度が高くなったり、
水分補給できないと、塩分濃度の濃い細胞外液となり、
細胞内液と細胞外液の浸透圧のバランスが崩れる
そして、
浸透圧により細胞内液の水が細胞外に移動し、
血液などの細胞が脱水状態になるなど、
機能を果たさなくなり、活動が困難になる
腎臓の働き
心臓から腎臓に流れてきた血液はろ過される
(血液中の血球やタンパク質以外の液体成分)
こうして「原尿(尿の元)」ができ、
その先で再吸収され、残ったものが尿として排泄される
再吸収
原尿に含まれている物質のうち必要なものを吸収し、
尿として捨てないようにする働き
これによって、
余分な水分と塩分だけが尿となって排泄される
(塩分濃度も一定に保たれる)
体内濃度と腎臓の働き
細胞外液の浸透圧の調整は、
原尿の再吸収による水分の調整で行われる
海水など塩分濃度の高いものを摂取すると、
腎臓では原尿の再吸収を増やし、尿の量を減らして、
細胞外液の水量を増やし、濃度を一定に保とうとする
調整が間に合わないと危険状態に陥る
この機能で調整しきれなくなり、
細胞外液の塩分濃度が上がると、
細胞内液と細胞外液の浸透圧のバランスが崩れる
そして、細胞内にある水が細胞外へ出ていき、
細胞内が脱水状態に陥る危険な状態になる
海水と喉の渇き
海水を飲むと、海水中の塩分が体内に吸収され、
体内の塩分濃度が上昇することになる
その体の状態を脳で察知し、
浸透圧を下げるため水分が必要となる
すると、脳から喉が渇いたという指令が出され、
口や喉の渇きが発生し、水を飲みたくなる