「こうよう」と「もみじ」の違い
「紅葉」という漢字を用いて
「こうよう」「もみじ」と2つの読み方があるが、
それぞれ読み方によって意味するものは異なる
【紅葉(こうよう)】
基本的には現象や景色をいう時に用いられる呼び方
主に落葉樹の葉が秋付近の季節に
落葉の前に赤や黄色に変化する自然現象のこと
もしくは、色鮮やかになったその景色全体のこと
色の区別無く呼ばれる場合と、
赤い場合のみを指す場合がある
【紅葉(もみじ)】
基本的には植物自体をいう時に用いられる呼び方
一般的には、「紅葉している楓(かえで)」のこと
もしくは、その中でひときわ赤色の目立つもののこと
植物自体を「紅葉(こうよう)」と呼んだり、
景観に対して「紅葉(もみじ)している」とは言わない
「かえで」と「もみじ」の違い
どちらも分類上はカエデ科カエデ属の植物
一般的な区別
【かえで(楓)】
カエデ科カエデ属の植物の総称
秋になると紅葉を行う落葉樹のものが多いが
常緑樹もある
英語圏では一般に「Maple(メープル)」とされる
【もみじ(紅葉)】
「楓」のうち、秋に葉が色づいたものや
ひときわ赤く色づいたものの総称
(葉の切れ込みが深く、小ぶりで、鮮やかな赤色)
「イロハモミジ」「ヤマモミジ」など、
もみじと名の付く楓もある
葉の特徴による区別
【もみじ】
• 葉の切れ込みが深いもの
• 葉が5つ以上に切れ込んで手のひら状のもの
(イロハモミジ、ヤマモミジ、オオモミジなど)
【かえで】
• 葉の切れ込みが浅いもの
• 切れ込みが3つ程度のものなど
黄葉(こうよう・おうよう)
赤く色づく葉を「紅葉(こうよう)」というが、
黄色い葉になることは「黄葉」という
黄色でも赤色でも、葉が色づくことや、その色づいた
景色全体を指して「紅葉」とされることが多いため、
「黄葉」という言葉は、あまり使われない
葉の色が変化するしくみ
葉の中には、
「クロロフィル(緑の色素)」と、
「カロテノイド(黄の色素)」がある
黄色への変化
このクロロフィルが葉の老化反応によって分解し、
カロテノイドが残ることで、葉が緑色から黄色に変化
赤色への変化
赤色へ変化するものは、
「アントシアニン(赤の色素)」の生成によるもの
色の違い
同種の植物でも色の違いが出るのは、
植物それぞれの色素を作り出す能力の違いや、
自然条件の違いが複雑に絡み合う結果による
クロロフィル
葉緑素ともいわれる緑色の色素
光合成によって光エネルギーを吸収する役割を持つ
カロテノイド
動植物界に広く存在する黄、橙、赤、紫などの色素の総称
クロロフィルが分解することにより、目立つようになる
カルテノイドは、光の害から植物を守るために機能する
「楓」においては、
若葉の頃から葉に含まれる黄の色素
アントシアニン
植物界に広く存在する赤、青、紫などの色素の総称
クロロフィルやカロテノイドが分解される際に生成され、
光の害から植物を守る働きをすると考えられる
「楓」においては、
葉の老化反応に伴い生成される赤の色素
「楓(落葉樹)」の1年
春から夏
葉緑体(クロロフィルなど)が光を吸収して
活発に光合成を行い、木に栄養をたくさん蓄える
秋
日照時間が短くなって光合成のエネルギーが減り、
栄養を幹に回すために葉の栄養はなくなっていき、
それにより「クロロフィル」が分解
➝葉が「赤色」や「黄色」に変化する
冬
栄養供給を断絶された葉は老化し、落葉する
これによって、無駄な水分やエネルギーが
冬の間に消費されるのを防ぐことができる
「かえで」「もみじ」の語源
かえで
蛙(かえる)の手の様に見えることから、
「蛙手(かえるで)」⇒「かえで」
と転じたとされる説が一般的に知られる
もみじ
染め物の「揉み出づ(もみいづ)」に由来する
という説が一般的に知られる
紅花染めには紅花(べにばな)の花びらを使うが、
この花びらには紅と黄の2種類の色素が含まれており、
これを水や灰汁に浸けて揉むことによって
黄色や紅色の染料を「揉み出す」
楓の紅葉の様子を、この色の変化の様子と重ねて、
「揉み出づ(もみいづ)」や「もみずる」と表現し、
そこから転じて「もみじ」となったとされる
紅葉狩り(もみじがり)
「狩り」の元々の意味は、
野山で獣や鳥を追い立てて捕らえること
そのうち、植物に対しても用いるようになった
(「いちご狩り」や「キノコ狩り」など)
さらには、山野などに分け入っていく行為自体や、
そこで楽しむ景観などにも用いられるようになり、
「紅葉狩り」という言葉が生まれたとされる
(実際に狩る、採るのではなく「観賞」を楽しむ)
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