ソメイヨシノ(染井吉野)
全国各地に数多く植えられている桜の品種
(全国の桜のうち、8割を超えるとも言われる)
主に街路樹、河川敷、公園、学校などに植えられ、
観賞用の桜の代表種である
春に一斉に咲き、わずか2週間足らずで散る様子は、
春の季節を彩る風物となっている
全国のソメイヨシノはクローン
各地から収集したソメイヨシノを解析したところ、
同一クローンであるという研究結果も出ている
つまり、全てのソメイヨシノは、
一つの原木(もしくは、限られた数本)
を基としたクローンであるとされる
このクローンであるという特徴を利用して、
「桜の開花予想(桜前線)」の対象とされていたりする
特徴
外観・サイズ
• 花は大きめで、花びらは5枚
• 花色は咲き始めはピンク、満開になると白色に近づく
(つぼみの段階では濃いピンクや赤っぽい色)
• 桜の中でも最も大きく成長する一種
(良好な環境下であれば、15~20mなど)
• 成長が早く5~10年で見栄えのするサイズに育つ
その他の特徴
• 葉が出る前に花が開き、満開となる
(花の満開時に葉は出ていない)
• ほとんど実はならない
(稀に多種の桜との間で果実ができる)
• 秋になると紅葉する
(他種の桜も同様)
開花、満開時期
開花時期は地域や年によっても変わる
• 九州、四国などでは「3月頃」に開花する
• 東北、北海道などでは「4、5月頃」に開花する
• 関東や関西では「4月前後頃」に満開の時期を迎える
誕生
江戸時代に江戸の染井村(現在の東京都豊島区駒込辺り)
の植木屋で売り出された品種とされる
この元となる品種は遺伝子研究によると、
• エドヒガン系統の桜
• オオシマザクラ
これらが交配されたものであるとされるが、
自然交配によってできたのか、
人工的に交配させてできたのかはわかっていない
原種の特徴の受け継ぎ
①. エドヒガンザクラ➝「花が咲いた後に葉が出る」
(オオシマザクラは葉と花が同時に出る)
②. オオシマザクラ➝「花びらが大きめで丸みがある」
(エドヒガンザクラの花びらは細長く小さめ)
ソメイヨシノは①、②の様な観賞に適した部分を
各原種から受け継いだ品種
韓国・済州島起源説
韓国・済州島(チェジュトウ)の
「王桜(ワンボンナム)、和名:エイシュウザクラ」が、
ソメイヨシノの起源だとする説もあった
しかしこれは、
現在のDNA調査の結果により否定されている
王桜は「エドヒガン」と「オオヤマザクラ」の種間雑種
(ソメイヨシノとは別種、起源ではない)
名称の由来
元々は「吉野桜」という名称で売り出されていたとされる
これは桜の名所「奈良の吉野」からとったものとされ、
ブランド戦略のようなものであったと考えられる
(実際の吉野地域の桜の種類は主に「ヤマザクラ」)
1900年頃に、「ヤマザクラ」と混同しないように、
染井村の名をとった「ソメイヨシノ(染井吉野)」
という名前に改められたとされる
繁殖
「ソメイヨシノ」は、自然に増えることが出来ず、
エドヒガンザクラとオオシマザクラを交配させても、
同様のソメイヨシノを作ることは難しい
自家不和合性
桜は「自家不和合性」という性質をもっている
これは、同一固体(自身)の花粉で受粉しないということ
(クローンであるソメイヨシノ同士では結実しない)
ソメイヨシノ以外の桜との交配は可能で、
実をつけその種子が発芽することもあるが、
できたものは、ソメイヨシノとは別品種になる
増殖法
ソメイヨシノの増殖は、
「挿し木」や「接ぎ木」などによって行われる
挿し木(さしき)
ソメイヨシノから切った枝を土に挿し、
発根させて1本の木へと成長させる
接ぎ木(つぎき)
オオシマザクラなど、
土台となる木(台木)に切り込みを入れ、
そこにソメイヨシノの枝を差し込んで接ぎ合わせる
根➝「オオシマザクラ」、幹から上➝「ソメイヨシノ」
病気
ソメイヨシノは同様の遺伝子を増殖させたものなので、
交配で通常得られるような新しい耐性が得られない
このため、特定の病気に掛かりやすく環境変化に弱い
(特に「てんぐ巣病」という伝染病にかかりやすい)
病害が広がれば、一斉に枯れる可能性もある
てんぐ巣病
カビの一種の菌が原因で発生する伝染病
伝染した枝を放置すると、
花が咲かず、細かく枝分かれし、やがて枯れてしまう
(徐々に全体に感染していき花の数が極端に減る)
現状では、伝染方法などの原因が解明されておらず、
防除する薬品はなく、枝を切るしか方法がない
寿命
ソメイヨシノは、寿命が短い桜だと言われている
(ソメイヨシノ寿命60年説というのもある)
ただし、樹齢100年を超えるソメイヨシノも数多くある
原種の一つであるエドヒガンザクラは長命で、
全国に樹齢1000年を越えるものが数多く存在する
(山梨県の山高神代桜は、樹齢2000年ともいわれる)
寿命を縮める原因
老衰や病気以外の寿命を縮める原因は以下など
• 街路樹として多用され、根の周辺まで舗装される
• 踏み荒らされやすい場所に植樹されている
• 植栽間隔が近く、隣り合う木の枝が重なり合う
(重なり合った枝が日照不足となり、徐々に枝枯れ)
次世代の桜
ソメイヨシノは、
• てんぐ巣病に弱く、てんぐ巣病の拡大につながる
• 大木になりやすい
• 根が浅く広く張り、街路や敷地を変形させ障害となる
このようなことから、
ソメイヨシノ以外の品種を植えることが増えてきている
代替品種
代替品種として推奨されているのは
「ジンダイアケボノ」「コマツオトメ」など
特徴
• てんぐ巣病に強い
• 色合いはやや紅色が濃く、鮮やか
• 花びらの形や咲く時期がソメイヨシノとほぼ同じ
(花が咲いた後に葉っぱが出るという特徴も同じ)
ジンダイアケボノ
ソメイヨシノが交配されてできたもの
コマツオトメ
ソメイヨシノと近縁とされる品種
エドヒガン、オオシマザクラ、ヤマザクラと
その他の交雑
桜の種類
桜には、
• 人の手が加わっていない「野生種」
• 人の手で増殖する「栽培品種」
がある
そして野生種にも、「種間雑種」といって、
自然の中で違う種が交配して誕生するものがある
野生種・栽培品種を合わせると300種類以上といわれる
野生種(基本種10種)
• ヤマザクラ
• エドヒガン
• オオシマザクラ
• カスミザクラ
• マメザクラ
• タカネザクラ
• チョウジザクラ
• ミヤマザクラ
• オオヤマザクラ(ベニヤマザクラ、エゾヤマザクラ)
• カンヒザクラ(ヒカンザクラ)
※ヒガンザクラ(彼岸桜)とは異なる
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